明治維新の直後、政府によって推し進められた政策に、富国強兵と殖産興業というものがあったことをご存じの方も多いかと思います。
これはもちろん、西洋化の一環として、今までになかった概念を日本が取り入れたわけですが、元の英語を日本語訳するときに「殖産興業」という字を当てるセンスにおいて、日本人というのは抜群のスキルを示すらしいです。当時新しい英語の概念を日本語に置き換える役目は、福沢諭吉とか西周たちが担当していましたが、残念ながら「殖産興業」を誰が訳したのか、はっきりしたことはわかっていません。
センス抜群と言われるゆえんはその意義をよく文字が表わしているからですが、特に「殖」と「興」という文字を使ったあたりにその凄さが垣間見えるらしく、これを教えてくださった方は「最も美しい日本語のうちのひとつ」とまで絶賛しておられました。
昔「バックグラウンドを知ることと卓越した実況は、スポーツを面白くする」という趣旨の記事を書いたことがあったかと思いますが、僕にとっての最も美しい日本語が「殖産興業」ではないのは僕が経営史の専門家ではないからで、バックグラウンドを知らないからだと想像できます。
よく「オタク」という人種が一人でニヤッとしているのを見かけますが、あれは彼にしかわからない領域で、彼が彼なりの美しい響きを見出し、その美しさに酔いしれているからだと思うのですが違うでしょうか。今もパソコンを打っている僕の横で、何も映っていない画面を見てニヤついている方がいらっしゃいますが、このように思わないと完全にホラーです。
さて僕個人の話ですが、「一番美しいと思う日本語を挙げてください」という問いに対してはっきりと答えを申し上げることはできません。そこまで深く文字を眺めたことがなかったというのが率直なところです。「桜」という文字を見たときにその花をイメージし、綺麗だから「桜」の文字は好き、というのとはちょっと質の違う質問ですし、なかなかに難しいものがあります。ただ一番かどうかは別にして、「法人」という言葉はちょっとセンスを感じます。いやまさに今その文字を見てて思ったんですが。
僕の歴史は浅いです。
1 件のコメント:
おれの中での上手い日本語訳(当字)ナンバーワンは「混凝土」(コンクリート)やな
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